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パリから旬のエッセンスをお届けします。
美しいデコレーションのケーキたちは、見ているだけでしあわせな気分に浸れそう

左:ローズとブラウンで統一された愛らしい店内

上:ローズの香りがひろがる繊細なショコラ

右:
一番人気のチョコレートムーズフランボワーズ


上:オーナーの渡辺美幸さん

左:
ずらりとならぶショコラは、パリでしか買えない日本へのお土産にも


La Petite Rose/
ラ プティットローズ

11,boulevard Courcelles 75008 Paris
TEL 01 45 22 07 27
営業日 木~火 10h–19h30
水曜日定休
Métro:M2,3 Villiers

 
パリに居て、こんなにほっと安心できるパティスリーはなかなか見つからない。
パリ8区メトロVilliers駅から地上に上がると、淡いピンクのルーフが目に入る La Petite Rose。駅前の風景の一部でもあり、人気のパティスリー のオーナーは日本人パティシエの渡辺美幸さん。フランスでは指折りの、6区のGerard Mulot/ジュラール ミュロを経て、2003年に自身のショップをオープンした。


街に愛されるパティスリー

店内は、ショーケースとその横に数席のサロン・ド・テがあり、ゆったりとお茶を楽しみながら午後のひとときを過ごす人々で溢れる。ランチタイムのサラダを添えたキッシュやスープなどは、近くのオフィスに勤める人にも人気。

愛らしいカラーの内装と各テーブルに添えられたバラの一輪挿しが、心をゆるませてくれる。「スタッフはオープン当初から全て日本人。そのきめ細やかなサービスが、常連のフランス人のお客様からも支持され、ぜひそのスタイルを続けていってほしいと言われています」と、渡辺さん。ショップの外からも見える美しいデコレーションの20種以上のケーキたち、つい足をとめる通りすがりの人々。思いついたように店内に吸い込まれ、ケーキやショコラを買っていく、ランチタイムのデザートにケーキを持ち帰るムッシュ、ショーウィンドウをうっとりと眺めるマダム、つい子供のように笑顔がほころぶ。

近所の人々の評判から口コミでいつしか遠くからもお客さんが来てくれるようになったという。人気のケーキは"チョコレートムースフランボワーズ"。とろりとつややかなチョコレートのベールの下には、きめ細かくやわらかいムース。その中に隠れている酸味と香り豊かなフランボワーズが、チョコレートと抜群のハーモニー。タルトやマカロン、焼菓子など、宝石のようにちりばめられたお菓子達が店内を飾っている。ケーキ創作のインスピレーションは、普段の生活から得ることが多いが、スタッフとの会話の中でふと生み出される新作もあるそうだ。


日本人がパリでショップを開くということ
「日本人だからという意識はなかったし、今も特にありません、地元の人に受け入れられ、そのカルティエに馴染むお店を目指しました」。パリはなんといってもグルメの街。そこに住む人々を唸らせ、愛され続けるパティスリーを経営することは並大抵の努力では叶えられない。渡辺さんは目指すものを地道に追い続け、夢を実現した。

お店を開くに当たって日本とは違うことだらけ。物件探しからはじまり、店舗の契約、関連の手続きなど、書類文化の国フランスでは右へ左へとその準備追われた。

無事お店をオープンしてからは、毎朝6時半には仕込みがスタート、自分のお店となると、20時の閉店後の商品の管理までもすべて自ら行わなければならない。オーナーパティシエとして、これまで経験のなかった経理の仕事などもこなす。さまざまな業務をスタッフに指示しながらも、常に頭の中はお店のことでいっぱいという日々。苦労は多いけれどやはり自分のパティスリーをパリに開くことができた喜びはひとしお。

パティシエとしての視点から、フランスと日本の違いを渡辺さんはこう語ってくれた。「例えばお菓子作りの道具の使い方。日本人は学校などで教えてもらった通りに使うよう習慣づけられますが、フランスでは時にはお菓子用ではない道具でも、個々のアイディアでお菓子作りに取り入れてしまうんです。目からうろこでした。自由なスタイルと応用力を学んだように思います。お客さまからの特別オーダーのケーキなどの創作に スタッフや研修生のアイデアが取り入れられたりすることにもびっくりしました。
立場や地位にかかわらず、良いアイデア、提案は認めて褒める、受け入れるという姿勢に感動し、フランス人と働く職場は楽しく、また多くの貴重な経験もしました。」


香りも一緒に織り込んだショコラは、いつでも人気
フランスではショコラは手土産の定番アイテム。Pâques(復活祭)やNoël(クリスマス)のバカンス時期の帰省のおみやげにも欠かせない。また男性が女性へのプレゼントに添えることもしばしば。渡辺さんのショコラへの思い入れも深く、La Petite Roseのショコラは全てヴァローナのものを使用している。35種類のラインナップから自由に選び詰めるスタイルが人気。ショコラティエの祭典“サロン デュ ショコラ”にも出展して話題となった。お店の名前にもなっているローズが香るショコラなど、甘さが控えめな中に、洗練された香りがふわりと広がる。

その他のお菓子作りにも、もちろん香りも意識する。フランスならではのバターの豊かな香りから、ショウガやミントなど。またサロン・ド・テでは丁寧に作られた香り高く濃厚なショコラショーもいただける。ついまた味わいたくなる。

日々忙しく働く渡辺さんもオフのリラックスした時間には友人を招いて料理をふるまうそうだ。今ではすっかり地域の人々の生活に溶け込んでいるパティスリーのオーナー、日常の慌ただしさは表面には見えないが、穏やかな笑顔の中にはパリで積み重ねてきた経験と実績、さらにこれからへの夢が溢れていた。


 
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