四季折々の植物の話。


仏 Osmanthus de Chine / 英 Sweet Osmanthus

秋の訪れと共に、小道を歩いていると、ふわりとどこか懐かしい香りがしてくる。 橙黄色の小さな花を枝いっぱいにつけた金木犀(きんもくせい)が、乾きはじめた空気の上に、果実のような瑞々しい芳香をただよわせている。

中国原産のこの金木犀は、別名「桂花」(中国名は「丹桂」)。その美しい色をもつ花がまるで月に生える木のようだといわれ、 中秋の月があざやかな金色に輝いてみえるのは、月の桂花が咲いたからだという民話もある。黒砂糖のような甘みも感じる香りの豊かさから、花を白ワインに漬けてつくる「桂花陳酒」、その花弁をお茶に混ぜてたお茶などで香りを愉しむ。

日本では江戸時代の絵画や陶器にも描かれ、可憐で気品のある芳香が好まれていた。庭木としても人気があるため、花の開く時期には、どこからともなく香りがただよい、秋を彩る風物詩とも言える。

香料"Osmanthus absolute"は金木犀の花から抽出される。 その甘酸っぱくフルーティな香りは、フレーバーやフレグランスの変調用に微量にもちいられ、ジャスミンなどのフローラルノートともしっくり調和する。

1972年フランスの名調香師ジャン・パトゥにより創り出された「1000/ミル」は大胆かつ妥協をしない香料のセレクトや手作りのフラコンなど、 当時世界でもっとも贅沢な香水と話題になった。多彩な香りのハーモニーを奏でる彼の豪華趣味を表現したシプレ・フローラルの香り。 天然の金木犀とジャスミンがふんだんに用いられ、オリエンタルフローラルとアプリコット調の繊細なノートは、エキゾチックで官能的な女性をイメージさせる。

深まる秋に、季節の花香を感じながら香りをまとえば、こっくりとした秋色の空気に溶け込むことができそう。


 
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