四季折々の植物の話。


仏 Muguet / 英 Lily of the Valley

5月1日はフランスはFête du Travail(メーデー)として祝日。大切な人、愛する人にスズランの花を贈る日でもある。16世紀にフランスの国王がとある女性にスズランを贈ったことがはじまりで、その後、プレゼントする人にも受け取る人にも幸せが訪れる、と言われるようになった。フランスではこの日は、誰でも街でスズランを売ることができる。街角のいたる所にスズラン売りが小さな売店を開く。その様子は5月のフランスの風物詩。休日の一日は、愛らしくすっきりした甘い香りの芳しいスズランの花を携えた人びとの笑顔で賑わう。

スズラン(鈴蘭)はユリ科の多年草で日本名のように鈴のような独特の形をした小さな白い花を咲かせる。その小ささからは意外なほどに、可憐でややグリーンを帯びたみずみずしい香りがたっぷりと感じられる。フランス人にとって、春から初夏を思わせる花として親しまれている。幸福のシンボルとして花嫁が手に持つ習慣もある。

フローラルグリーン調のフレッシュで甘い香りは、フローラルノートをつくるための大切な香りとして、香水などに幅広くもちいられている。スズランから天然の香料を採取することは行われていないので、その香りを再現した調合香料などで表現される。

Diorissimo / ディオリッシモ(ディオール)(1956年)は、調香師 エドモン ルドニツカによって創作されたディオールを代表する名香のひとつ。幸運をもたらす花スズランをイメージした香りは、数あるスズランの香水の中でも傑作と言われ、半世紀以上 経った今でも愛されている。発売当時のフラコンの、バカラのバロック様式のシャンデリアをイメージしたフォルムも有名。近年ではアニック・グタールがその名もLe Muguet / ル ミュゲ(2001年)を発売。5月1日のスズランを贈る習慣になぞらえた幸福の贈りもの、さらに夏の訪れを予感させる香りがイメージ。

春から夏にかけて、太陽の日差しと心地よい初夏の風に揺られる季節。溢れる自然のきらめきに背中を押されるように、香水を変えてみたくなる。今年はスズランの幸福感を香りでまとってみてはいかが?


 
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