四季折々の植物の話。



仏 Lilas / 英 Lilac

やわらかい春の陽射しが照る頃に、甘くふくよかな香りが通りから漂う。フランスには "Le temps des lilas / リラの季節"と言うフレーズがあり、美しく喜ばしい春を意味する。リラの花が咲くと周辺が明るく軽やかな雰囲気に包まれる。この季節の習慣としてリラのブーケを贈るなど、フランスの街路を彩る春の代表的な花のひとつ。春の様子を描く詩や歌などにも登場する。

和名は紫丁香花(むらさきはしどい)。現在は英語のライラック、もしくはフランス語由来のリラと呼ばれることが多い。ヨーロッパ南東部〜コーカサス・アフガニスタンが原産のモクセイ科の落葉樹。学名Syringa Vulgaris。南フランスのグラースでは3月末に咲きはじめる。涼しく乾燥した地を好むため、日本では関西以西には成育できないが、北海道ではよく育ち、札幌の市花に指定されていて、毎年5月にライラック祭りが開催される。4月〜5月に小さな花が円錐状の形に咲く。白、淡青、紫、ピンクなどの色がある。もとは中東から渡ってきたとされ、名前もペルシャ語 の"lilac(青っぽい)"という由来、また学名のSyringa / シリンガはラテン語で葦の意。花言葉は「初恋の思い出」「無邪気」「純潔」。

リラの花のおだやかな甘さの春らしい香りは、欧米ではポピュラー。やわらかなフローラルの中にバルサム調(植物の外部を傷つけた時にでる甘みと温かみ のある香り)、ほのかにスパイシーさも感じられる。品種によってフローラルな中にもグリーン調、すずらんのような香りなどを見出すことも。天然の香料は採取されず、各香料会社が合成香料などに花香を加えて調合香料で再現する。

日本では馴染みのうすい香りだが、フランスでは春のアイコンとして広く親しまれている。優しい印象のフェミニンな香りで香水からコスメティック、空間のフレグランスとして用いられる。
フランスの人気女性調香師オリヴィア・ジャコベッティが、エディションドゥパルファン フレデリック・マルで発表した、En Passant / オン パッサン(仏語で「通りすがり」の意)は、春風にのって庭から香る白いリラのイメージ、オレンジの葉、瑞々しいキュウリと麦のアブソリュートというオリヴィアのユニークなアレンジが光る、シンプルなフローラルアクアティックノート。
パリの老舗香水メゾンRIGAUDリゴーのフレグランスキャンドル、Lilas / リラは、繊細でやわらかなリラをベースに、グリーン調のノートが清々しく香り、すずらん、シャクヤク、イランイランとフローラルをたっぷり堪能できる春におすすめの逸品。

青空にきらめきくように香るリラはフランスの春の歓びを感じさせてくれる。

 

 
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